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2007年5月19日 (土)

ハンドルを握る女。

雨ニモマケズ
風ニモマケズ
雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ
丈夫ナカラダヲモチ
慾ハナク
決シテ瞋ラズ
イツモシヅカニワラツテヰル
(宮沢賢治・手記より)

私の所持する運転免許証はゴールドです。無事故・無違反、模範的なドライバーなのです。それもそのはず私には車がありません。車がないので運転する機会もなく、したがって事故も違反もないというわけです(笑)
移動手段は専ら自転車。職場にも買い物にもどこへ行くにも自転車があれば事が足ります。
風を切って前進した時、なんだか今の自分をもっと好きになれそうな気がするのです。
誰かの言葉にもありましたが、「この世の中には定まった価値など存在しない」のです。
ある人にとっては単なるママチャリにすぎないものが、ある人にとっては便利この上ない道具だったりします。
また、ある人にとっては冴えない見てくれの悪い人でも、ある人にとっては最愛の人だったりします。
そういう、ウソ偽りのない素直な感情こそがこの世の中の価値を決定しているのでしょうか。
それは人によって「愛」と呼ぶものかもしれません。
「愛」はお金では買えません。
本当に欲しいものに出すお金は、お金ではないのです。

いつもK美さんの笑い話ばかりなので、もっとその良さを引き出してあげるような内容でもたまには披露せねばと思いました。
我が友K美さんは車の運転が非常に上手く、助手席に座る人を心地よい気分にさせてくれます。
彼女には二十代の頃から様々なところへとドライブに連れ出してもらいました。
行った場所を羅列したらきりがなく、それほど二人であちらこちらへ出掛けました。
まだ母が健在の時、いつものようにK美さんと出掛けて来ると言って玄関を出ようとした私に、「K美さんが男の人だったら良かったのにねぇ。」と、ぼやいたものです。

箱根峠、十国峠、熱海峠、玄峠、韮山峠、亀石峠、冷川と、伊豆の山並みをつないで走る伊豆スカイライン。天城の山々を中心にして、カーブの多い山中の林道を滑るように走った天城街道。
私は助手席で地図を開いて張り切ってナビゲートするのに、全くあてにならず、要領を得ない指示でK美さんを困惑させ、最終的には彼女のドライバーとしての勘働きに任せ、私は車窓に広がる風景を愛でながらお菓子をつまんでいたりするのです(笑)

両親が自営業者だったこともあり、幼い頃どこかに連れて行ってもらった記憶のない私は、社会人になってK美さんと出掛けるドライブがたまらなく嬉しかったし楽しかったのです。
沼津の千本浜海岸で夕日に向かって「バカヤロー!」と叫んだことや、国道1号線でちんたら走るベンツをスイスイ追い越したことや、ねっとりした霧の中なにか詩的なことを呟きながら疾走したことなど、様々な思い出が私の胸の内をゆったりと廻るのです。

駿河平から望んだ夜景を覚えていますか?
あの時、二人の間に会話などなく、ただ静かに時間だけが流れていました。
この先、あと何回K美さんの隣りに便乗することが出来るかわかりません。K美さんに愛する人が出来たら、私はその席をそっと空けなくてはならないからです。
私たちが見て来た美しい景色を、感動の瞬間を、こぼれるような笑顔を、あなたは次に人生のパートナーと分かち合わねばなりません。
頼りなくただそこにいた私に代わって、今度はおそらくきっと全てを任せられる人が、圧倒的な存在感で守ってくれるに違いありません。

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コメント

青春ドラマの様ですね。
夕日に向かって「ばかやろう!」なんてのは、私にとっては物語の世界です。私、こう見えても(見えてないって!)比較的シャイなタイプでして。
「柔道一直線;桜木健一主演」とかは、青春ドラマでよく見てました。桜木健一と自分とは置き換えて空想の世界に浸ったりしてました。実は、相手役の「吉沢京子」が好きでした。吉沢京子さんなんて、多分ご存知ないと思いますが、タイプとしては、自分の気持ちをストレートに言えず、ひたすら相手が気付くまで待つタイプ・・・に演じられてました。あの頃は、ドラマでも非常に近い世界で、本当にすぐ背中合わせではないかと思ってました。
今では・・・・・・(^^)

投稿: 晴兵衛 | 2007年5月20日 (日) 20:44

晴兵衛さんコメントありがとう(^o^)
そうですか、そんな青春の一ページがあったのですね(*^_^*)
どんどん年を重ねていきますが、私はいつだって青春していたいと思っています(笑)
自称約23歳という年齢でこれからも突き進んで行きたいと思っているんですヨ(^_-)-☆
お互い、青春を謳歌しましょうね~(*^^)v

投稿: さんとう花 | 2007年5月20日 (日) 22:34

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