« 秋野不矩美術館。 | トップページ | レンタルする女。 »

2007年5月 4日 (金)

石田徹也遺作集。

私は映画を観に行くために浜松の街中、スクランブル交差点を横切っていました。
むせかえるほどの人の波と熱を帯びた風の吹き返しに、思わず酔ってしまいそうでした。
天候に恵まれ、明るい陽射しがアスファルトに反射して革靴に熱が伝わって来るほどでした。
3日から浜松祭りが開催されるせいもあって、車道のそこかしこに御殿屋台がシートを被って止められていて、通行人の多くはハッピを着ていました。
何やら楽しげにわいわいと騒ぐ女子高生たち、歩道の脇にしゃがんでメールを打つ数多の大人、ベビーカーを押しながら赤ん坊に語りかける新米ママ、ガイドブックとにらめっこしながら立ち往生する観光客。
全てが全て初夏の躍動感に萌えていました。
でも私はGWがあまり好きではないのです。
GWに限らず、お盆休みとかお正月とか。
仕事が休みなのは大変嬉しいことなのですが、長期の連休に私は人並みの楽しみを満喫できないような気がするからです。
私には故郷もなく、帰省する実家もなく、あるいは我が家に親戚が集まるということもありません。
兄弟姉妹もいないので、私を気遣う電話がかかってくるわけでもありません。
個人的な旅行の予定も特になく、孤独そのものです。
世の中には、そんな立場の人間はいくらでもいると自分に言い聞かせ、気にしないでいるつもりなのですが、雑踏の中の己を省みた時、急に込み上げて来る郷愁に思わず戸惑いを隠せません。

私は、本屋で以前から探していた画集をやっと見つけることができました。
それは「石田徹也遺作集」です。
この孤独で絶望的な絵を前にした時、私の心の傷は半減されるのです。
深い深い海の底に沈んでいる悲哀を、静かに弔うことができます。
石田徹也は静岡県焼津市出身で、武蔵野美術大学造形学部視覚伝達デザイン学科を卒業しています。
グラフィックアート「ひとつぼ展」にてグランプリ受賞。
毎日広告デザイン賞優秀賞受賞。
JACA日本ビジュアル・アート展グランプリ受賞、等々。

石田作品は、ダリやマグリットなどのシュールレアリズムに傾倒しており、写実を基本にしています。
私が衝撃を受けたのは、携帯電話が男の顔面を押し潰し、鮮血に染まって絶命している作品、部屋の一角に建てられた墓石の前でヘッドフォンをして座る男の作品です。
そこに意味があるのかないのか、あるいはイメージ先行なのか、そんなことはどうでもよいような気がします。
モチーフになっている男は紛れもなく石田徹也本人。
彼はキャンバスに自分の何を見たのでしょうか?
その魂の叫びは私の心にこだまし、意識の空間を反響し続けるのです。

「私、寂しいんです。あなたも寂しいですか?」

私は彼に問いかけたい。
でも、石田徹也は31歳で急逝しており、すでにこの世の人ではありません。

|

« 秋野不矩美術館。 | トップページ | レンタルする女。 »

コメント

あなたには自由がある。
あなたには夢がある。
あなたには才能がある。
あなたには勇気がある。

何も欠けたものはありません。
何も怖がることはありません。
あなたの不安は誰にもあるものではないですか。
逃げてはいけません。

笑顔だけがあなたを美しくします。
上を向いて歩いてみたら、
笑って笑って過ごしてみたら、
きっと、みんながあなたに
手をさしのべていることが分かるから。

投稿: けい | 2007年5月 5日 (土) 06:55

けいさん激励のお言葉ありがとう(^o^)
でも・・・。
私に才能なんて、あるのでしょうか?
私に勇気なんて、あるのでしょうか?
誰が私に手をさしのべてくれるのでしょうか?
あなたはそこから応じてくれますか?
私の嘆きを受け止めてくれますか?
優しいだけの言葉は、罪です。

投稿: さんとう花 | 2007年5月 5日 (土) 10:39

私が昔一文無しのとき、ある人が言いました。
どうやったらお金に不自由なくなるのですかと。

私はちっとも困らないよと言った。
何故かというので、言いました。

無いと思うから欲しい、貧乏だと思う。
どんなに大金持ちでも、欲しい欲しいと思っている人は貧乏人と変わらない。

お金のない人でも、別にあるだけで暮らし欲しいと思わなければ、大金持ちとかわらない。

不自由なんて思わないと。

投稿: けい | 2007年5月 5日 (土) 12:02

無能無才。小心にして放縦。怠慢にして正直。あらゆる矛盾を蔵してゐる私は恥づかしいけれど、かうなるより外なかったのであらう。
意志の弱さ、貧の強さ、あゝこれが私の致命傷だ!
(種田山頭火随筆より)
理屈ではわかっているけれど、求めないではいられない弱く哀しい性を持つ私なのです・・・。

投稿: さんとう花 | 2007年5月 5日 (土) 12:22

あきらめる。もうどうしようもない愚かな自分に。何も出来ない。何も持っていないふがいない自分。どうとでもしてくれ。もう何もかもすべてを投げ出して許しを乞う。誰にでもない、この自分の置かれた境遇に。

本当にそう思えたら、何の未練も、欲もなくしてしまえたら、誰にたよるでもない自分のすべてを投げ出せたら、かえって真に強いあなたがそこにいることに気づくはず。

でも、あなたには何もかもが揃いすぎている。だから欲もある、期待もある、なにもかにもしてみたい、して欲しい、そんな気持ちになるのではないですか。自分に正直になる必要があるのではないかとおもいます。

投稿: けい | 2007年5月 5日 (土) 13:30

貴女の境遇に、貴女自身が没頭してませんか。
この記事だけですが、そんなこと感じました。
決して卑下することはないでしょうけど。
GWでも、家にて、掃除に片付けしてるだけの僕。
だから、偉そうにいえませんが。
貴女の文章、その清流さには惹かれます。
これからも、読ませてくださいね。

投稿: カイ | 2007年5月 5日 (土) 19:39

けいさん、あなたにはいつも甘えてしまうよ・・・。
心のどこかで慰めてもらいたくて仕方がない自分がいるのです。
あなたの言う通り、私は揃いすぎているのかもしれません。
ないものねだりの自分に嫌気がさしてしまいます(>_<)
だからあまり私をいじめないように(笑)

投稿: さんとう花 | 2007年5月 5日 (土) 21:34

カイさん、コメントありがとう(^o^)
ちょっと自己陶酔し過ぎの私ですね(^_^;)
きっといい年して甘えたいのかも(*^_^*)
今回も遊びに来ていただいて嬉しいです☆
またお立寄りくださいね~(^_^)/~

投稿: さんとう花 | 2007年5月 5日 (土) 22:33

こういう中でこんなコメントしにくいんですが、先日来、K美さんのキャラが心に引っかかっておりまして、次はどんな局面で、どんなセリフがでるのか楽しみなんです。またお願いしますね(^O^)

投稿: 晴兵衛 | 2007年5月 6日 (日) 18:22

晴兵衛さんコメントありがとう(^o^)
あははは・・・(^o^)
K美さんのおもしろい話題はもりだくさんです。
先日も伝説(?)になりそうな事件が勃発しました。
なので本人の了承を得てから記事にしたいと思います(笑)

投稿: さんとう花 | 2007年5月 6日 (日) 23:45

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 石田徹也遺作集。:

« 秋野不矩美術館。 | トップページ | レンタルする女。 »