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2009年6月21日 (日)

蒸発。

梅雨の晴れ間を利用して久しぶりに街まで出かけました。
行動範囲の狭い私が行くところなんて決まっていて、まずはスタバ。
平日の真昼(6月19日)は利用客も少なく、明るい窓際の特等席を確保。
ミックスベリータルトに舌鼓を打ちながら、あったかいコーヒーをいただきました。
ほんのりとベリーの酸味がアクセントとなり、しっとりとしたタルトの生地とムースが口の中に広がるのです。

何をするでもなく、ぼんやりと窓の向こうを眺めていると、歩道に乗り捨てられた数台の自転車を、女性警官が何やらチェックしています。
メジャーで計ったり、登録番号を確認したり・・・。
その脇で淡々とビラ配りに精を出す若い女性。
どうやら英会話教室の宣伝のようです。
足元には、心ない通行人に捨てられたチラシが虚しく散らばっています。

日常が動いている中、私は自分の心の置き場所を必死に探しているのです。
様々な煩わしい出来事から解放されたい。
どこか遠くの方へ行ってしまいたい。
差し当たりこういう心境を“蒸発してしまいたい”とでも表現するのでしょうか。

少し古い作品になりますが、夏樹静子の「蒸発」を読みました。
この作品は1973年に発表されたミステリー小説で、36年後の今読むと、時空を越えて当時の世相がありありと伝わって来るような気がします。

事件は、満席の飛行中の機内から女性客の1人が消失するという不可解な出来事から展開する。
新聞記者であり妻帯者でもある冬木と、夫も子どももいる美しい人妻との不倫が、思わぬ形で深い闇の底へと突き落とされる結末を迎える。
男女の愛が、他人の不幸の上に成立しないものであることを、もの悲しく訴える。

夏樹静子と言えば、長年に渡り、格調高い推理小説を次々と生み出した稀代の女流作家です。
慶應大学在学中に、すでに江戸川乱歩賞の候補に挙がるほどの実力派なのです。
今で言う宮部みゆきのポジションにいた売れっ子作家と表現したら分かり易いでしょうか。
時代が変わり、推理小説も日々進歩していく中、根強く人気が高いのは、やはりジャンルが社会派ミステリーであると言うことでしょう。
現実社会で起きた事件と複雑に絡み合う人間の心理に迫ったミステリー。
これこそが圧倒的インパクトたる所以のように思われます。
コメディタッチの軽い読み物に飽きたら、たまにはじっくりと本物の推理小説をひも解きたいものです。
時代を越えて楽しめる一冊でした。

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コメント

おひさしぶり。お元気そうですね。スタバで一人たたずむ。絵になりますね。

ところで、私も最近遠藤周作を読みました。古き時代と言ってもそう前のことではないのですが、読んでいて安心感があります。

読んだなという満足感があります。軽いものばかりがもてはやされる時代ですから、古いものの価値が見直されているのでしょう。

投稿: けんたろう | 2009年6月22日 (月) 07:43

けんたろうさん、ご無沙汰しています(^^)
お元気そうでなによりです。そうですか、遠藤周作を読了されたのですか?
もしかして「深い河」でしょうか??
映画化もされていますが、文字どおり内容的に深い作品でした。クリスチャンである著者が、聖なる河ガンジスで何を思い、何を感じたのか・・・。非常に興味深い小説でした。
古い小説にも新しい発見があるところがおもしろいですよね。また何かオススメの小説などありましたらご紹介くださいね~(^_^)/~

投稿: さんとう花 | 2009年6月22日 (月) 23:10

御無沙汰です。

最近はお書きになっていないのですね。

ところで、遠藤周作。このとき読んだのは、『沈黙』です。

キリシタン禁制中に潜入する神父。その神父たちの見た日本とは。何を当時の日本人キリシタンは教えと受け取ったのか。

それは仏教とも置き換えられるものであって、とても興味深いテーマでした。

結局は、日本人はそのものをそのまま受け取れない人種なのでしょう。自分たちのいいように変えないと受け入れられない人たちなんだということです。

だから、国際化も出来ないし、グローバルなんてものにもとても不向きなんでしょう。

投稿: けんたろう | 2010年1月24日 (日) 19:58

本当にご無沙汰しています!
けんたろうさん書き込みありがとうございます(^o^)
最近はブログの更新が滞りがちで、月に一度か二度・・・まるで気まぐれな独り言になりつつあります、はい。
けんたろうさんのブログにもまたおじゃまさせてもらいますね!(←でも片方のブログは閉鎖されましたよね??)
お変わりなくて、本当によかったですヽ(^o^)丿

投稿: さんとう花 | 2010年1月24日 (日) 22:10

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