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2010年12月 7日 (火)

トリアングル。

年に一度の楽しみなので、今年もまたクリスマス・ケーキを予約することにしました。
直径15cmの一番小さいタイプのものです。
毎年予約しているM店で今年もまた・・・と思っていたところ、突如として出現した噂のA店。
ホームページを確認したところ、クリスマス・ケーキは1種類しかなく(大きさは指定できるらしい)、フランス式の伝統的なプッシュ・ド・ノエルのみ。
しかもパティシエは、フランス人とな!
どおりでホームページが英語みたいな横文字の羅列なわけだよ(汗)
A店は、その本場仕込の格調高いスイーツを提供することで有名で、プロの職人さんがここのケーキを求めて全国から訪れるとのこと。
私は何やらこれまでお世話になったM店に対し、背徳的な気持ちを抑えることができませんでした。
「今年は思い切ってA店に乗り換えてみようかしら?」
すでに私の気持ちは8割方A店に向かっていました。
しかし、やっぱりさんとう花は勇気がなく、チャレンジ精神に欠け、そして何より浮気という倫理に反した行為のできない人間なのです、はい。
「一時の気の迷いにまどわされちゃダメよ。私にはM店があるんだから!」
こうして私は揺れる女心をどうにか納め、M店のクリスマス・ケーキを予約するに至ったわけです。

そんな中、俵万智の『トリアングル』を読了しました。
俵万智と言えば、1987年に上梓した『サラダ記念日』で一世を風靡した歌人です。
その後も『チョコレート革命』などの歌集も出版し、コンスタントに文壇を賑わせている売れっ子歌人なのです。
その俵万智が初めて書いた小説が、この『トリアングル』です。
興味本意で読んでみたのですが、なかなかおもしろかったです。
ライトノベルの感覚で読めるので、何も難しいことは書いてありません。
素直に「カッコイイ」と思ったのは、小説の中に散りばめられた、その時その時の主人公の気持ちを織り込んだ短歌が加えられているところです。
「さすがだなぁ」と思わずにはいられませんでした。

主人公は33歳の女性でライター。
様々な人物や物を取材して、記事にしていくというやりがいのある仕事に就く独身である。
結婚については考えないでもないが、目下、付き合っているのは妻子ある年上のカメラマン。
だが一方で、ひょんなところで知り合った年下の売れないミュージシャン志望の男性とも付き合いが始まってしまう。
主人公は、二人の異質な男性をどちらも同じように好きになってしまい、苦悩する・・・。

二人の男性を手玉に取るだなんて、私のこれまでの人生経験上、一ぺんもないのですが、正直、あこがれてしまいます(笑)
『トリアングル』は、働く女性に読んでもらいたいです。
大人の恋愛のマネゴトをしてみたい若い女性にもオススメです。
男性にとっては・・・どうだろう、ちょっと甘めな小説かもしれません。
俵万智の新境地を味わうのに、充分すぎる恋愛小説でした。

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2010年12月 1日 (水)

死の棘。

師走に至って何もこんな小説を読まなくてもいいじゃないの、と友人から注意を受けるであろうことを承知の上で、紹介したいのです。

『死の棘(とげ)』を。

ちまたで持てはやされるのは、明るく陽気で、ちょっぴりせつない“恋話”的な物語だと思います。もちろん、私もそういう小説は十代のころさんざん読んで来ました。
とにかく読後はハッピーな気分になりたい、その一心で読み耽っていた記憶があります。
今だって惚れたはれたの世界を堪能するのは、言わずもがなです。

口幅ったくて恐縮ですが、39歳になってしまった私も、それなりの経験を積んで来ました。
両親の死、自分自身の離婚、我が家のお隣の火事によるもらい火など・・・もうとにかくいろいろ続けざまに重なったので、自分の精神状態をコントロールすることに必死でした。
毎日が孤独と絶望の闘いで、それなのにやっぱり勇気がなくて死ぬことも出来なかったのです。
そういう辛くしんどい日々も、歳月とともに薄れていきます。
人間というのは、本当に都合の良い生きものなんですね(笑)

さて、そんな中、私はどん底の気分をまたもや味わうことになりかねない小説を読んでしまいました。
それは、島尾敏雄の『死の棘』です。
簡単に言ってしまえば、この著者の私小説です。
しかし、芸能人などが得意とする暴露本や、身辺雑記などといっしょに考えてはいけません。正に、精魂込めた、生きるためにペンを取った小説であると言って過言ではないでしょう。
島尾氏の奥様が精神に異常をきたし、その原因が自分の度重なる放蕩、快楽にあったことで、良心の呵責に苛まれるのです。
狂気と正常を行きつ戻りつする妻と、二人の幼子を抱え、島尾氏は絶望の淵をさまよい、藁をもすがる思いでこの小説を書いたのです。

妻がすっかり発作のなかにはまりこんで、その終わることのない愛情の確認についての尋問がはじまっていた。(中略)あたしを愛していたか、愛していたのになぜほかの女と交渉を持ったか、今はどうか、将来はどうか、あたしの失ったきもちはまたもどってくるだろうか、もどってこなければ生ける屍だから死ぬほかに道はない、など。
『死の棘』より島尾敏雄・著

この小説は暗く、陰鬱で、正直、救いどころのない作品です。
しかし、今の自分が身の置き場のないほど苦しい立場にあればあるほど、この小説を読むことによって、「ああ、下には下があるもんなんだなぁ」と不思議な励みになるのです。
もっとハッキリ言ってしまうと、「まだ私の方がマシかも」という救いの手段にも成り得るのです。
もちろん、こういう小説が生理的にキライな方々もおられると思いますので、興味があって、しかも自分より不幸な人に出会いたい方に限ります。

実際にあったノンフィクションであり、人間記録でもあるので、向学のために読んでみたいと思う方、あまりの暗さに驚かないように。
孤独を寂しいことだと思わず、年末は今ある健全な精神に感謝をしつつ、ぼちぼちと過ごしていきましょうね!

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