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2014年8月13日 (水)

天上の青

リアルタイムでは知らないのですが、連続婦女暴行殺人事件の犯人として、その名も有名な大久保清。
私などの世代は、外出の際に親から、「大久保清みたいな男がいるから気をつけなさいよ!」などと注意を受けたものです。
とにかく、それほどまでに殺人鬼として恐れられた人物なのです。

この事件が明るみになったのは、1971年に群馬県警によって大久保が逮捕されたことによります。
すでに43年も昔のことで、しかも加害者である大久保は死刑を執行されており、以来これほどまで世の女性を震え上がらせた事件は、余りありません。
とはいえ、昨今の凶悪事件の報道からも分かるように、冷酷で凄惨な事件は減少傾向にはなさそうです。

曽野綾子の『天上の青』は、そんな大久保清の事件から材を取った作品です。
実際の大久保は画家を装い、「絵のモデルになってくれませんか?」と女性に声をかけていたようですが、小説の方では、自分は詩人で本も出しているとウソをついて女性に近づいていくシーンがあります。
私も女なので、そんなウソくさい言葉でもコロリと騙される女性心理は、分かるような気もします。
女性というのは、相手がアーティストだったり、クリエイターだったりすると、がぜん興味が湧くのだから不思議です。

さて『天上の青』ですが、これは主人公である波多雪子が育てている朝顔の品種で、ヘヴンリー・ブルーという名前を和訳した意です。

あらすじです。
ある朝、雪子は庭の朝顔の手入れをしていたところ、見知らぬ男が近付いて来た。
男は雪子の育てている朝顔が気に入ったようで、種を分けて欲しいと言う。
雪子が快諾すると、男は種が取れたころにまた来ると言って去って行った。
雪子は今年38歳のシングルで、2歳年下の妹と二人暮らしをしていた。
出版社に勤務している妹はパリパリのキャリアウーマンで、明るく社交的な性格をしているのに対し、雪子は地味で大人しく、人との付き合いが苦手であった。
だが和裁の腕があるためそれを活かし、生活を支えていた。
ある時、いつか朝顔の種を分けて欲しいと言った男がひょっこり現れた。
男は宇野富士男と言い、離婚歴はあるが現在独身だとのこと。
雪子はせっかく来てくれた宇野という来客を家に上げ、少しの間おしゃべりをし、頼まれていた朝顔の種を渡した。
宇野はこれを機会に雪子と親しくなりたいと、雪子の電話番号を聴いた。
雪子はすんなりメモ用紙に書いて手渡してやった。
その後、雪子とは何度か会っておしゃべりをしたり、つかの間のひとときを楽しんだが、雪子と宇野は男女の間柄になることはなかった。
そんな中、宇野は雪子の知らないところで、めぼしい女を物色し、言葉巧みに車に乗せ、性行為に及び、何かの拍子に激昂すると、殺害して遺棄するという行為を繰り返すのだった。

小説の後半で、結局、宇野は逮捕されるのですが、謝罪や反省の言葉を口にすることはありません。
ところがそんな宇野のために、雪子は自腹を切って弁護士を頼みます。
もちろん、雪子の周囲は大反対で、世間からの非難を浴びます。
作中の宇野は、母親から無責任な愛情を注がれ、無職でブラブラしているにもかかわらず、5万円もの小遣いを渡され生活しています。
そんな自分勝手でいい加減な態度に、富士男の義兄は嫌悪し、度々衝突するのですが、どうすることもできません。

著者はそういう生活環境を露わにすることで、犯人をフォローしようとした形跡はどこにもありません。
むしろ、淡々と冷酷さやら残忍さを描いているぐらいです。
巻末の解説にもあるように、「生い立ちから詳細に説き起こして、そういう犯罪にはしらざるを得なかった必然性のようなものを探り出す」というパターンではないのです。

では、一体どんな意図があってこの事件にスポットをあてたのでしょうか?
これは、私個人的な感想ですが、主人公の雪子がクリスチャンであることがキーワードとなっている気がしてなりません。
社会を揺るがすほどの凶悪事件を起こしていながらも、雪子にとっては優しい男だった富士男に対し、憐憫の情があるのです。
「死刑を執行する制度も人も共にない方がいい」と思っているのです。
ただ、現実には宇野富士男は死刑判決を受け、執行されてしまいます。
それだけの罪を犯しているのですから、当然の報いだとも言えます。

“人が人を裁いてはいけない。神のみが裁いて良い”というスタンスにあるキリスト教者にとって、現実的な法の裁きは相当な負担を強いられるものだと思います。
理不尽で納得のいかない、不正で不当なものがゴロゴロと横たわる現実社会では、誰もが片目を瞑って耐え続けていかなくてはなりません。
『天上の青』は、多くの課題を突き付けた小説となっており、単なるサスペンスものというカテゴリには収まり切れない、社会派長編小説なのです。

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コメント

こちらの勝手都合を理解してくださり臨機応変な対応していただきました。
プレゼント用だと伝えると大小、大きさの異なる
メッセージカードまで付けて下さいました。
しかも2種類も。
また手書きのお手紙が添えられていて嬉しかったです。メールの文章も機械的なものではなく どこか温もりを感じる文章でした。
梱包も大変、丁寧でセロハンテープなんか剥がし易い様にしてあったり。
商品も説明通りでした。それ以上にコンディションの良いものでした。
また気になるものがあれば利用させて頂きます。
ありがとうございました。
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投稿: スーパーコピー ヴィトン 手帳 中身 | 2021年11月 2日 (火) 14:21

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